第2章 12月14日【あと10日】
くつろぎすぎるのも申し訳がないので、キッチンの前に置かれたテーブルで持ち帰った仕事の続きをする。
宮本くんったら、懇談の志望時間の記入してくれてないじゃない。あ、佐々木さんも。いや、クラスも大事だけど、部活も問題が山積みじゃない。今日は休みだったからよかったけど、明日から部活があるし……。バスケットボール部が半面使うから、バレーの練習メニュー少し変えないと。試合形式にしようかな。折角だから1年生の子達もコートに入れて……
「大変そうですね」
「いや、大丈夫。これくらい……って、もう準備できたのね」
グラタンのほんわかしたミルクのようなクリーミーな香りが鼻をくすぐる。チーズの少し焼けたいい匂い。
「仕事も程々にしてくださいね。お体に障りますから」
「そうね。でも、だからといって手は抜けない」
死神が少しオーバーに肩を竦め、出来立てのグラタンをガーリックトーストと一緒に私の前に置く。ガーリックの食欲をそそるこの香りがまたたまらない。
「手を抜いてほしいとは思いますが、そういう生真面目な所があなたの魅力でもあります。ですが、もう少し肩の力を抜いた方がいいというのもこれまた事実」
スプーンでグラタンをひとすくい。
湯気が立っていて、すごく熱そう。
「折角ですし、今日喧嘩してきた同僚の方に頼んでみてはどうですか?」
熱っ。
舌、火傷したかも。
「喧嘩じゃないし。というか、かえって迷惑だと思う」
「いいえ。手伝って欲しいとその方に言って、謝る口実を作るのです。あなたの事ですから、どうせ、責任感だとかプライドだとかそういう矛盾したものが邪魔して、ろくに謝れないでしょう?」
うっ……。
図星。