第18章 3回目
全部を話し終えた頃には、次の挨拶をする部屋…及川徹の楽屋の前に着いている。
そこで、一旦は終わらせて扉をノックしようとしたけど。
「…何で、そんな危険な目にあった事すら相談しないんだ?」
手を痛いくらいに掴まれて止められた。
挨拶より、説教が先のようだ。
「社長が、タレントを護るのは事務所の役目だって、話してるだろ。」
声が低い。
完全に怒っていらっしゃる。
「や、その…あの。心配…掛けたく、なくて…。」
言い訳ばかりが、途切れ途切れに口から出る。
「それで、怪我でもしたらどうするんだ?もっと、心配掛けるって分からなかった?」
何も言えなくなって、謝る事すら出来なくなって視線を泳がせる。
誰か助けて、なんて考えていると扉が開いた。
「はぁーい。そこで、そんな話しないの。周りに丸聞こえになっちゃうよ?」
中から出てきた及川徹が、縁下さんを宥めて部屋の中に促してくれる。
それで、安堵したのも束の間の事だった。
「…さて、シンデレラちゃん?俺も、そこまでの事があったなんて聞いてないんだけど?
ブログに君の名前出したから危ない目にあった、って逃げる企画の事だと思ってたんだよね。」
今度は、及川徹も加わっての説教タイムが始まる。
普段は優しい人と、ヘラヘラしている人と。
タイプは違えど、常に笑顔イメージの人達が本気で怒ると恐ろしいのだと知った。