第12章 2回目の撮影
その数十分後、撮影が始まった。
台本も、打ち合わせも無く、始まったものだから焦ったのは言うまでもない。
何があるか分からないまま、呼ばれてセットの方に入る。
まだ慣れない、ライトアップされた世界に目を細めた。
「「りこ!」」
突然聞こえた声に驚いて、そちらに顔を向ける。
横に並べられた席に座っている3人。
その中で、緊張も何も関係がなさそうな2人が手を振っている。
2人と無関係を装おうとしている京治くんは、あさっての方向を向いていて。
セットの外にいる夜久さんが苛々しているのか、握り拳を見せつけていた。
撮影中なのに、普段と変わらない皆を見ていると、自分も普通に振る舞える気がする。
「…有難う。」
マイクに入らない程度に小さく呟いて、前を向き直した。
MCに勧められた椅子に座って、いよいよ始まるトーク…の、前に。
私の3ヶ月を記録したVTRが入るらしい。
そんなもの、あるとは知らず。
いつ撮られていたか分からない映像を持ち出されて、消えた筈の緊張が戻ってきてしまった。