第8章 モデルのお仕事
やっと撮影が終わったと思ったら、次はインタビューである。
それ、聞いてないよ、社長。
特集してくれるんだから、あるかも知れないと予想はしていたけども。
言っちゃいけない事とか、ないのだろうか。
無難な事だけ返しておけば良いかな。
ごちゃごちゃと、色々考えながら質問に答えていた。
考えすぎた所為か、またもや記憶はほぼない。
控え室で帰り支度を済ませて部屋から出ても、変な記事を書かれたらどうしようか、とか、そんな事ばかり考えていた。
その所為で、前は全く見ておらず、誰かにぶつかってしまう。
「前見て歩かないと危ないっすよ。」
「すみません。」
ぶつかった相手から、降ってきた声には覚えがある。
謝ってから、高い位置にある顔を見上げた。
さっきの王子様衣装から、カジュアルな装いになっている灰羽さんが立っている。
「灰羽さん。なんで、いるんですか?」
インタビューは私単体だったし、撮影は終わっているから帰ったと思っていた。
「リエーフでいっすよ。」
「リエーフさん。」
「だーかーらー!リエーフ!」
疑問を投げた筈なのに、返ったのは呼び方を気にした言葉だけ。
呼び直しても、さん付け自体が気に入らないらしい。
この世界は上下関係が厳しそうだし、年齢は関係なく先輩である人を呼び捨てには流石に出来ない。
「ちょっと、それは無理です。リエーフさん、先輩ですから。」
「俺、そーゆーの苦手なんすよ。」
首を振って拒否しても、聞き入れては貰えなかった。