第38章 関係を変える嘘
何と無く、曖昧なまま始まった関係の私達。
連絡するのにも、何かしら理由を付けなきゃいけない気がして、私は嘘つきになった。
例えば…。
誰かに後をつけられた気がする、とか。
街中で視線を感じるから怖い、とか。
元シンデレラだけあって、実際にそういう目に遭った時もあるから、完全に嘘ばっかりって訳じゃないのだけど。
起こる事の方が稀なのに、頻繁に危ない目にあった顔をしている。
岩泉さんは疑う事を知らないのか、毎回心配して駆け付けてくれていた。
それが嬉しくて、つい今日も嘘を吐いてしまったところである。
ただ、本日は運が悪かったようで。
「…よォ。遅くなって悪いな。」
とても、疲れた顔での登場だった。
仕事は休みの日を選んで連絡した筈だったけど、予定があったみたいだ。
「なんか、すみません。」
「別に構わねぇよ。あのクソ撒くのに時間掛かっちまっただけだ。」
嘘で振り回して申し訳ない。
頭を下げると、軽く叩くように触れる手のひら。
少しだけ罪悪感が軽くなって、部屋に招き入れた。
その直後、扉が閉まる前に外から手が入ってくる。
ちょっと怖い展開だったけど。
「ちょっと、岩ちゃん!及川さん置いてくなんてヒドくない?」
その手の主は知り合いで。
岩泉さんの眉間に、深い皺が刻まれた。