第36章 ドラマみたいに…(月島エンディング)
勘違いだったからって、1年間が無駄だったとは思いたくない。
前の地味な私じゃ、釣り合わないと思っていたのは事実。
今なら、月島さんと並んでも恥ずかしくない気がする。
「月島さん、好きです。付き合って下ひゃ…っ。…下さい。」
「なんで、そこで噛むの。」
意を決して、2度目の告白をしたと言うのに、緊張からか上手く言えなかった。
返ったのも突っ込みだけで返事じゃない。
結局は対象外なんだなと思って落ち込んだ。
「その程度で噛んじゃうんだから、君に女優は向いてないよ。次からは、そういう仕事断ってよね。周りに迷惑だし。」
追い討ちまで掛けられて、どんどんと気持ちが沈んでいく。
「…演じてるとはいえ、あんなの2度と見たくないから。」
「…あんなの?」
「君の、キスシーンなんか見たくないって言ってるんだよ。なんで分かんないかな。鈍すぎて、こっちが困るんだけど!」
呟くように続けられた言葉の意味が分からなくて、鸚鵡返ししてみると怒られた。
説明された事を頭の中で反芻する。
キスシーンを見たくないのは、多分ヤキモチ。
鈍すぎるって言うのは、それに気付けって事。
あれ、それって、返事は…。
「…あの、返事はオーケーと言う事で宜しいのでしょうか?」
「そうじゃなかったら、君の仕事を制限する権利なくない?」
確認の為の問いにも、回りくどい返答。
現実は、ドラマみたいに甘くない。
だけど、分かりづらい上に意地悪い言い回しをするのが、月島さんの特徴だ。
それを知っているから、すんなりと受け入れられた。
月島エンディング‐end.‐