第32章 解けない魔法(リエーフエンディング)
最後に撮影したのは、舞踏会のシーン。
動き続けたら、撮れないからなのか、ダンスの途中で何回も止められる。
リエーフとの身長差もあって、止まる度にかなり辛い姿勢を強いられたけど。
モデルとしてはプロであるリエーフに恥はかかせたくないし、私にだってプロのタレントとしての意地がある。
なんとか、撮影を終わらせて控え室に戻った。
着替えを済ませ、一息つく。
変な体勢を取り続けたから、明日は筋肉痛だな、なんて考えていると扉が開いた。
「りこ、一緒に帰ろ?」
中に入ってきたのは、リエーフ。
いつもなら、迷惑掛けんな、とか言って突っ込みにくる夜久さんは何故かいない。
「リエーフ、また噂になったら困るから2人で帰るのは無理だよ。」
「俺は噂になってもいーし。」
「私は、困るの。」
断りはしてみたものの、押し問答を続けると負けるのは私で。
「りこ、俺の事、キライか?」
「そういう訳じゃ…。」
しかも、そんな子犬みたいな目で見られたら敵う訳がなくて首を振って返した。
「じゃ、いーだろ!帰ろーぜ?」
途端に、はしゃぎ始める姿はまるで子供のようだった。
早く早く、と急かすように私の腕を引いて外に出る。
やたらと、激しいスキンシップで、肩を抱かれたりするのには困ったけど。
また、あの子犬顔で迫られたら負けるだけだから諦めておいた。