第8章 あなたの笑みを誰も知らない
「…い…おい…聞いてんのか?」
『あっ、ごめん…』
私の顔を覗く海斗…
「全くあいりは…どこかに飛んでいるのはいつものことですけど…」
『えっと…初めて会ったときのことを思い出しててね?あのときと黄色い声は変わらないなーって…』
「あー雨の日な…俺、お前がどっかのチームのスパイかと思ってよ?今考えればこんなチビがスパイなんかできるわけねーのにな。本当に俺どうかしてたわ」
『海斗‥」
「あ~あのときの純粋なあのあいりちゃんは今はどこへ…」
『斗真‥』
海斗も斗真も失礼しちゃう!
今度奴等には塩入りコーヒーの刑だ!
「そういえばあいりが熱を出してすごく慌ててましたよね…仁?」
「うるせ。」
「着きました…入りますよ」
ファミレスの中に入ろうとした時…
耳元で囁かれたバリトンボイス
「俺がお前の処女をもらったときのことも思い出したのか?」
『……じ…仁!』
「なんだ…図星か…」
「そこのおふたりさん、早くしてください」
『もうっ!』
私はずかずか優の元へ歩く
「ククッ…」
後ろで仁が優しい眼差しであいりを見つめ笑っていたことは誰も知らない…