第8章 あなたの笑みを誰も知らない
~1年前~
母を失い、辛く苦しい時期だった
雨が降っている中、今日はどうしても濡れたい気分で傘をささずに歩いてた
そしてたどり着いたのが公園だった
名前も知らない公園に入ってただ立ちつくす
雨が嫌なことを全て流してくれる気がした
「…泣いているのか?」
『…』
顔を上げると黒の傘を持ったひとりの男がいた
「濡れるぞ…」
『別に…いいの』
「…」
『心配して…くれるひと…いなくなっちゃったから…』
「…そうか…」
それだけをいうと私の肩を引き寄せ傘に入れてくれた
「風邪引く…」
『…』
「お前のことは俺が心配してやるよ…」
『えっ…』
「行くぞ…」
そのまま男に肩を抱かれ歩き出した
そして着いたのが“ルナ”だった
“ルナ“はクラブの名前
裏路地にひっそりとあり“X“が女を拾う場所として有名だった
しかし都市伝説的にしか捉えていなかった私には本当にあったのかという驚きでしかない
全身ずぶ濡れでこの格好だと中に入れてくれないのではと思ったが入るだけ入ってみた
「寒くねぇか?」
『…大丈夫』