第3章 人の噂は3カ月程度と思います
それからの私は早かった
走って帰り簡単な荷造りをして大家のおばちゃんに電話をかけた
“ちょっとの間部屋空けますが‥‥っえ?あ、大丈夫です。ちゃんと戻ってきますよ。そんなに心配しないで、大丈夫よ?‥”
スゴく心配されちゃったけどどうにか部屋はそのままにしておいてくれるようお願いした
父親が物心ついたときからいなくて、それでも母と二人で幸せに暮らしてきた
小学生のとき“お父さんは?”って尋ねたら母が悲しそうな顔で“ごめんね…”って
その表情は忘れられない
それ以来父のことはあまり聞かないようにしていた
このボロボロの家も私が生まれてからずっと住んでいる
昨年母親が病気で亡くなり私はひとりになった
初めはスゴく辛かった
でも夏海や夏海の家族が支えてくれた
たまに近所の人たちもお土産を持って様子を見に来てくれた
だから私は立ち直れた
本当に私の周りは温かい…
『さよなら…』
自分の生まれ育った街にしばしのさよならだ
私は今日この街を去る