第15章 信じることは簡単なことじゃない!
『斗真…やっぱり変だよ?何かあったでしょ?』
いつの間にか俺の正面に立っている彼女
チームのことは全く知らない、というより仁が教えない
まして仕事の内容は極秘だ
「ん~?な~んにもないよ。
あいりちゃんはそんなに俺が心配?
ん~強いて言うならタイプの女の子が見つからなかったことかな~?」
『……。
ほどほどにね?斗真だって大切なチームの一員だよ?』
何かを悟っても深くは聞いてこない彼女
「あいり浮気か?」
『ちょっと…!仁!違うっん!』
きっと仁は俺の気持ちに気付いてる
それを直接は言ってこない
仁なりの気遣いだと思う
目の前であいりを抱き締めながら目だけはこっちを向いて“こいつは俺のだ。いい加減諦めろ”と睨み付けられる
「和馬~情報」
「さんきゅ…」
パソコンを弄る和馬に封筒を渡すと苦笑いをされ
「いくらお前でもあの子だけは手に入らねぇよ」
「…知ってるよ~」
目の前で一途に好きな男を見つめる彼女の姿に惹かれたから…最初っから失恋決定だったんだけどな?
『もう、仁!怒るからね?』
「それもいいな?怒ってくれよ」
『……優助けて…』
「フッ…降参か?」
「…仁はMだったんですね?あの“X”の王さまが実はMだったとは…」
「…チッうぜぇ」
『Mってなに?』
「…お前のことだ…」
『えっ?どういうこと?』
純粋で真っ直ぐで意外と強いあいつ
あの王さまですら手こずるあいつ
真っ直ぐ俺自身を見てくれる女に出会いたい…
誰でもいいと思っていた頃に比べれば成長したな俺
「…斗真…心配…でも平気そう…」
「ああ、意外とな…」
俺には仲間がいる
今はひたすら前に進むしかない
がむしゃらに進めばきっと新しいものが見えてくる
「会議始めますよ」
「へいへい」
「あ、斗真。仁から伝言です」
「ん?」
「“てめぇに女はまだ早ぇ”だそうですよ」
「「「「……プッ」」」」
「てめぇら、特に海斗笑うな!」
「何で俺だけなんだよ?」
一緒にあいりも笑っていた
今は一番それが楽しいから細かいことは気にしねぇ
~斗真side end~