第114章 思わぬ出会い(10)
~翔side~
…俺は飲みに行こうって言ったんだけどな…
翌日、父さんから早速店を予約したからと連絡がきた
忙しい最中、俺のために時間を空けてくれたらしい
それはそれで嬉しいんだけど…
翔「…何もこんな高級料亭じゃなくて良かったのに…」
指定された店は会員制の料亭らしく、智くん曰く大野会長も度々利用しているらしい
翔「…仕方ない…わざわざ予約までしてくれたんだから」
俺は店の中に入り名前を告げると、そのまま奥の個室に案内された
部屋に入って暫くすると父さんが到着した
父「もう来てたのか?待たせてすまない」
翔「いえ、僕も今来たばかりです」
父さんの向かいに座り、用意されていたお酒を注いだ
父「…嬉しかったよ…翔から飲みに誘われて…息子とこうやって飲み交わすのが夢だったんだ…修はまだ子供だから、まだ先だと思ってたんだがな…」
翔「僕もです…昔から父さんとゆっくり飲んでみたかったから…」
父「育ててくれた父親とは飲んだ事ないのか?」
翔「…育ての両親は僕が17の時に事故で亡くなりました…それ以降は弟と二人だったので…」
父「…そうだったのか…一度ご挨拶したかったな…」
父さんは俺の話を聞いて悲しそうな顔をした
翔「あの…良かったら今度、弟も一緒に誘って良いですか?アイツも父親と飲み交わした事がないから」
父「ああ、もちろん大丈夫だ。良かったらまた良い店を予約して…」
翔「あの!良かったら今度は居酒屋とかどうですか?僕、良い店知ってるんです!」
父「そうか?じゃあそうしようか」
翔「はい」
…またこんな高級料亭じゃ肩凝るよな…