第95章 明けない闇、新たな光(1)
あの後、翔ちゃんを家まで運んで部屋で寝かせていた
その間に智兄が岡田くんに全て打ち明けていた
岡田くんはかなり怒っていたようで、智兄が宥めるのに苦労したって言ってた
<コンコン>
雅「…はい」
和「雅紀兄さん…翔兄さんはどうですか?」
雅「まだ寝てる…岡田くんは?」
和「とりあえず今日は帰しました。居ても煩いだけなので」
…相変わらずハッキリ言うなー…和…
雅「…ねぇ…潤は?」
和「潤くんはまだ店の片付けをしてますけど…何か用事ですか?」
雅「ん…翔ちゃんの目が覚めたら潤がいないと不安かな…って思って…」
そう言いながら俺は翔ちゃんの頭から頬に手を添えて撫でていた
本当なら俺が翔ちゃんの支えになりたいけど…今の俺では恐怖しか与えられないから…
和「あ…そう…ですね…ちょっと呼んで…」
翔「…ん…」
雅「あ…翔ちゃん?」
翔ちゃんが少し身動ぎをしたから顔を覗かせたらうっすらと目を開けた
…あっ!翔ちゃんの顔に手を添えてたままだった!
俺は慌てて手を離そうとした
でも翔ちゃんは…その俺の手を握ってきた
雅「翔…ちゃん?」
翔「…暖かい…」
雅「…え?」
翔「雅紀の手…大きくて暖かい…」
雅「翔…ちゃ…ん…」
記憶をなくしてから初めて…こんな穏やかな翔ちゃんを見た…
そして翔ちゃんはまた眠りについた…
俺の手を握ったまま…
和「…良かったですね…雅紀兄さん…」
雅「…うん…」
俺は溢れでる涙を拭うこともせず、ただ泣き続けていた