第89章 望まぬ指令(4)
潤「翔兄さんは…自分の夢を諦めてまで俺の事を養ってくれた…だから翔兄さんには誰よりも幸せになってもらいたい…ただそれだけなんだ…」
智「潤…翔くんの夢って何か知ってるか?」
翔兄さんの…夢?
潤「…プロのサッカー選手になりたいとか…大学に行って海外留学したいとか…」
智「…お前が一流のシェフになる事だよ…」
潤「え?」
俺の夢が翔兄さんの夢?
智「前に聞いた事あるんだ。翔くんの夢って何かって…その時言ってたよ。昔は今お前が言ってた事が夢だったけど、両親が亡くなってからは潤を養っていくのに必死で夢の事なんて忘れてたって…」
潤「・・・」
智「だから早く一人前になってもらいたいって思ってたから、今お前が自分の店を出せるようになった事で自分の夢は叶ったんだって…」
潤「翔…兄さん…」
智兄さんの言葉を聞いて、俺は涙が止まらなかった
雅「潤…よく翔ちゃん言ってくれるんだ…俺と出会えて良かった…好きになったのが俺で良かったって…それって幸せじゃないのかな…」
潤「雅紀兄さん…」
和「今回の事は確かに翔兄さんにとって辛い出来事だったけど、全てが不幸だと思って欲しくない…俺達は家族だから、皆で支えあっていけば良いと思うよ…」
潤「和…」
雅「翔ちゃんの事、守ってやれなかったのは俺もだし、正直本当に悔しい…でも後悔したってもう遅いから、今の翔ちゃんを守ってあげなきゃいけないんだ」
今の翔兄さんを守る…
潤「うん…守るよ…俺」
今まで俺は翔兄さんに甘えてばかりだった…
過去を変えることは出来ないけど、これからは誰よりも幸せになってもらうために…
今度は俺が父さん母さんの代わりに翔兄さんの事守るから…