第82章 雅紀の悲喜こもごも
あれ以降翔ちゃんと話をする事もなく、お互いの部屋を行き来する事すらなかった
智「雅紀…翔くんとまだケンカしてんのか?」
雅「ん…」
…って言うか完全に無視されてんだけど…
雅「…翔ちゃんもこんな気持ちだったんだな…」
智「あ?」
…あのストーカー事件の時…俺が翔ちゃんを無視し続けて…
今ごろになってあの時翔ちゃんがどんなに辛かったか解ったよ…
その上、ストーカーっていう見えない相手からの恐怖もあって…
さっきからハルくんが来て、何か吹っ切れたような事を言ってるようだけど、俺は思い切り自己嫌悪に陥っていてそれどころじゃなかった
カウンターでボーっと皿を磨いてたら…
翔「雅紀…」
雅「え?し、翔ちゃん!?」
翔ちゃんが突然話しかけてくれた
翔「雅紀…ごめん。あの時ドアが空いてたの俺だって気付いてなかったんだからお互い様なのに、雅紀だけを責めるような事言って…」
雅「そ、そんな事ないよ!俺が気を付けてれば良かったんだよ!」
翔「ありがとう…雅紀。これで仲直りだな」
そう言って翔ちゃんはニコリと微笑んだ
そんな翔ちゃんを見て俺は思わず抱き締めていた
雅「翔ちゃん…ごめん」
翔「もう良いって…」
雅「違うよ…俺今ごろになってあの時翔ちゃんの事どれだけ傷付けてたのか気付いたんだ」
翔「あの時って?」
雅「ストーカー事件の時」
その時、翔ちゃんは顔を少しうつ向かせていた