第73章 忘れられぬ想い(3)
その日の午後、葛城さんが迎えに来て葛城さんの運転で移動していた
葛「翔…」
翔「・・・」
葛「翔!」
翔「え!?あ、はい!」
しまった…ボーッとしてた…
葛「…どうしたんだ?さっきから上の空で…」
翔「…すみません…ちょっと寝不足で…」
いけない、今は仕事中なんだから…しっかりしないと
葛「翔…食事にはまだ早いから、良かったら美術展でもいかないか?」
翔「美術展ですか?」
葛「ああ、今人気画家の展覧会があるんだが…絵画には興味ないか?」
翔「えー…っと…興味ないって事はないんですが…俺絵画とかって自分が描けないから良くわからなくて…」
智くんならわかるんだろうけど…
葛「苦手なのか?」
翔「…以前和也から『翔兄さんの絵は芸術の域を越えてますよね』って言われました…」
葛「…どういう意味だ?」
翔「つまり、下手すぎて何描いてるかわからないって事です…」
葛「ア…アハハハハ!」
…そんなに笑わなくても…(確かに下手なんだけど…)
葛「スマン、スマン。なら、勉強の為にも行ってみるか?」
翔「そうですね…」
俺達はそのまま美術展に行き、その後葛城さんが予約していたフレンチレストランに行った
でも俺はその時、葛城さんと何を話し、何を食べていたのかも覚えていない…
…ずっと雅紀の事を考えていたから…
葛「翔…大丈夫か?」
翔「え?」
葛「いや…さっきほとんど食事に手をつけてなかったから…口に合わなかったか?」
翔「そ、そんな事ないです!とても美味しかったです!ただ、あまり食欲がなくて…すみません…」
葛「謝る事はない。俺が急に誘ったんだから」
ダメだな…葛城さんにまで迷惑かけて…