第61章 家族になろう(7)
葛「…翔…」
翔「…ひっ…く…う…雅…紀…雅紀…」
葛「泣くな…翔…泣かないでくれ…お前に泣かれるのは罵倒されるよりも辛い…」
翔「葛城…さん…」
葛城さんは、優しく俺の涙を拭ってくれた
葛「…すまなかった…お前に恋人がいたと聞いて嫉妬にかられていた…怖い思いをさせてしまったな…」
翔「葛城さん…俺の方こそすみません…黙ってるつもりはなかったんです…もう、こんな俺ではあの家には帰れないと思っていたから…だから、一時期は葛城さんの優しさにすがろうかとも思った…でも、駄目なんです…俺には雅紀しか…」
葛「もういい…翔…」
そう言って葛城さんは俺の事を優しく抱き締めてくれた
翔「ごめんなさい…ごめん…なさい…」
俺は葛城さんの胸にすがって泣いた
その後、俺は葛城さんにこの店に来た経緯を話した
葛「なるほど…そうだったのか…」
翔「はい…俺がここで働く事で、大野の皆も、子供たちにも危害が及ぶ事はありません…あの男にも俺が客をとることで、売り上げの一部が手数料として入ることになってるから、俺がここにいる間、皆に危害を与えることはしないと約束しましたので…」
葛「何だそれは!それじゃあ生け贄と同じではないか!!」
翔「…そうですね…そうかもしれない…」
それでも良い…そうする事で、皆が無事なら…
これが、皆へのせめてもの恩返しになるなら…
葛「…帰りなさい、翔」
翔「…え?」
葛「お前はこんな所で一生を終えて良い人間じゃない!お前はもっと幸せになって良いんだ」
翔「葛城さん…」
葛「来なさい!」
翔「あ!」
葛城さんは俺の手を掴み、部屋を出た