第55章 家族になろう(1)
~翔side~
あの日、和也に全てを話した…
和也は、今までと変わらず俺の事を「翔兄さん」と呼んでくれている…
けど、俺はこのままで良いんだろうか…
あの中で、俺だけは唯一『他人』だ…大野家とは何の血縁関係もない…
それどころか、何処の誰かもわからない孤児…わかっているのは名前だけ…
…あの日、智くん達に潤を託したら俺は何処か遠くに行こうと思っていた…
でも、潤と別れて一人になるのが怖かった…
…ずっと…雅紀の側にいたかった…
俺はここ数日、ずっとこの事ばかり考えていた
翔「はぁー…煮え切らないな…俺…」
仕込みで忙しい潤の代わりに買い出しに出ていた俺は、回りから『鬱陶しい!』と苦情を言われる程(和也なら間違いなく言ってる)本日何回目かの溜め息をついた
翔「…ん?やべっ!もうこんな時間!?」
気が付くと、俺が買い出しに出てから一時間以上経っていた
翔「急いで帰らないと、潤の仕込みに間に合わない!」
俺は急いで帰ろうとしたその時
「泥棒ーーー!!」
翔「え?うわっ!!」
突然の声に立ち止まった瞬間、足元に何かぶつかってきた
下を見ると、小学生低学年くらいの男の子が尻餅をついて座っていた
翔「あっ、ご、ごめん!大丈夫…」
男の子を起こそうと手を出した時、その子の手元を見て俺は固まった
「あ、あそこだ!!」
男の子は下に落ちた物を拾い走って逃げていった
翔「あっ!待って…」
「待てーーー!!」
俺も追いかけたけど、逃げられてしまった