第32章 偽装親子(5)
和「…ってた…」
潤「和、どうした?大丈夫か?」
和「辰己さん…知ってた…俺が香住さんじゃないって…」
潤「あっ…」
何で…どうして…?
柏「和也様…」
潤「柏木さん、どういう事ですか?」
柏「…申し訳ありません…実は旦那様が亡くなる前日に呼び出されまして、そこの弁護士の先生立ち会いの元、遺言書を作成されました」
亡くなる前日…?あの仕事を頼みたいって言ってた時の事?
和「何故、辰己さんは私が香住さんでないと知っていたのですか?」
柏「和也様と筆談をされた時に解ったそうです。私も知らなかったのですが、お嬢様は右利きに矯正されましたが、やはり扱いにくかったようで、旦那様の前だけでは左で書かれていたそうです…記憶喪失ならなおの事、使いにくい右では書かないだろうと…」
そういう事だったのか…俺はその事を聞いて涙が溢れでた
潤「和?」
和「ごめん…なさい…ごめんなさい…騙すような事…して…」
すると潤くんは俺の肩を抱いて…
潤「和…それは違うよ…亡くなる前日に辰己さん、何て言ってたか覚えてるか?」
あの時…そういえば部屋を出る時に…
『ありがとう…』
和「…あ…」
潤「辰己さん、違うと解って感謝してたんだと思う…だからお前に遺産を残すって言ってるんだよ」
辰己さん…最後看取ってあげたかった…
登「ちょっと!いい加減そんな猿芝居止めてよ!泣きたいのはこっちなんだから!」
潤「…何だって?」
和「潤くん…いいから…」
幹次「まったく…兄さんの気まぐれには付き合いきれん!言っておくが、そんな馬鹿馬鹿しい遺言書なんて認めないからな!!」
登紀子さんと幹次郎さんは怒って帰ってしまった