第28章 偽装親子(2)
~和也side~
俺と潤くんは今回の依頼人、柏木さんの案内でお屋敷に向かっていた
昨日の夜、柏木さんから『松山香住』の情報を聞き、今朝その情報を元に変装をした(まぁ、変装といってもウィッグをして、ちょっと化粧をしただけだけど…)
雅紀兄さんは「和可愛いー!」っていってくれて、ちょっと嬉しかった…
…そういえば、潤くんは何も言わなかったけど、あまり眼を合わせてくれないな…
柏「和也様」
和「え?あ、はい」
柏「今回の事、本当にありがとうございます。昨日旦那様にお嬢様が見つかったとご報告いたしましたら大層お喜びで、今朝は体調も良くお帰りを心待ちにしております」
和「そうですか…」
それを聞いて代役をして良かったと思った反面、病人を騙すようで心苦しかった
柏「和也様、確認でございますが…」
和「わかってます『松山香住は事故で記憶を失い、ショックで声が出なくなった』ですよね」
柏「はい…そうすればちょっとした違和感も、記憶喪失の為と言えますし、声だけは誤魔化しきれませんので」
そういえば…屋敷に入るまでに確認しておかないといけない事があったんだ
和「すみません、ひとつ聞きたいことが」
柏「何でしょうか?」
和「香住さんの利き手はどちらですか?昨日頂いた情報にはなかったので…」
柏「それは失礼致しました。お嬢様は元々左利きだったのですが、旦那様が右利きに矯正されたのです」
和「わかりました」
潤「和…大丈夫か?」
それまで静かに話を聞いていた潤くんが、心配して聞いてくれた
和「大丈夫、何とかなりますよ」
柏「もしや、和也様は左利きですか?」
和「そうですけど、私も右に矯正されたのでどちらもいけますよ」
柏「そうですか…良かった…あ、到着致しました」
俺達を乗せた車は豪邸の門をくぐった