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黒執事:短編

第8章 セバス夢:残り香


『えっ、あ、あのっ!!///////////』
「どうかなさいましたか?」
『ん・・・な、何でもないです・・・・////////』

耳元でつぶやかれて、名無しは耳まで真っ赤にし動けなくなった。

「では、何処が分からなかったのですか?」
『あ、えっと・・・・ここ・・・です////////』

プルプルと震える手で栞を挟んだページを開き、読めなかった部分を指差す。

「では、ここから一通りお読みしますね」
『は、はい///////』

セバスチャンが本を覗き込むような形になると、必然と名無しの耳元で話す形になる。
名無しは真近で響くテノールボイスに鼓動が早くなりながらも、朗読される内容を頭に入れようと奮闘した。

ふと、セバスチャンからふわりと香ったコロンの香りに気がついた。

(セバスチャンさんがコロン?何だか珍しい・・・)

普段、セバスチャンからコロンの香りなんてしたことはない。
そっと名無しはセバスチャンの首に擦り寄った。

「どうしました?名無しお嬢様」
『はっ!!な、何でもないです・・・へっ!?//////』
「先ほどから集中なされていないようですね」

ほぼ無意識にやってしまった行動に慌てて体を離すも、時すでに遅し。
顎を掴まれ、クイっと顔を上げさせられる。
目の前にはセバスチャンの端正な顔。
紅茶色の瞳にジッと見つめられ、名無しは心臓が飛び出しそうなほど鼓動が早まる。

「どうしたのか、教えていただけますか?」
『っ・・・せ、セバスチャンさんからコロンの香りがするので、どうしたのかな・・・って思って・・・/////////』
「コロン?・・・・あぁ」

クスリと微笑むセバスチャン。

「今朝、新商品のコロンの香りを坊ちゃんと選んでいたんですよ。その時、誤って坊ちゃんが私に向かってコロンを・・・」
『ぁ・・・そうだったんですか・・私てっきり・・・』
「てっきり?」

スッとセバスチャンの目が細められる。

『いえ、あの・・・・』

名無しは視線を泳がせる。

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