【HQ】片翼白鷺物語(カタヨクシラサギモノガタリ)
第4章 一富士二羽ノ【正月番外編】
「……いいんだ、話したくないなら話さなくていい」
「ん」
「話したくなったときに話してくれれば、それでいい」
自然と伸びた手に、くしゃりと頭を撫でられる。俺は若利に甘えてばっかりだな、とさらに笑みを深めた朔弥に、牛島もくすりと唇の端で笑った。ベッド横のローテーブルに雑誌を置く。先ほどまで手にしていたそれが到底まともに読めるような状態ではなかったことに、結局牛島は最後まで気付かなかった。
客間にしていた和室に敷いてもらっていた布団を牛島の部屋へ移動したことを、咎められることはなかった。ダチの家に遊びに来て別室で寝るってのも味気ないじゃん? とは朔弥の言い分だ。ちなみに昨夜は客間に牛島が布団を持ち込み、二人並んで眠った。
「そろそろ電気を消すが」
「うん。あ、アラームセットしなきゃ」
スマートフォンの液晶の光が、ぽうっと朔弥の白い顔を照らす。ふさりとした長い睫毛が澄んだ瞳に影を落とすのを最後に見て、牛島は初夢に向かって旅立った。