第7章 Pântano
ノックもせずにゆっくり扉を開くと…真っ暗な部屋の中、潤がベッドに腰掛け俺を見つめていた。
潤「………返事無くなったから行こうかと思った」
黙って潤の前に立つとそっと手を握られる。
潤「………大野さんと別れるの?」
「………分からない」
潤「じゃあ何でここに来たの」
「………分からない」
潤「分からないって…」
「潤だって彼女どうすんの」
潤「………」
「俺もお前も一緒だよ」
潤「………そうかも」
「………潤」
潤「ん?」
握られた手を強く握り返す。
「俺達…一緒に引き取られてたら…こんな風になってたかな」
潤「………分からない。でも…」
「………」
潤「俺はきっと…貴方の事愛してた」
「潤…」
潤「兄さん」
潤の腕が腰に回り、そのまま引き寄せられる。
潤「俺と…地獄に堕ちる覚悟…ある?」
潤の強い瞳から目を反らせない。
地獄に堕ちる…覚悟…。
それがどういう意味なのか。
分からない訳がない。
食べたくても食べられない。
禁断の果実。
それを食べてしまったら………後に待つのは…。
地獄。
俺は…潤の言葉に答える事が出来なかった。