第3章 convivência
雅紀「なーんか新展開だねぇいきなり弟くんと同居なんてさ」
「うん…これからどうなるのかさ…」
頭を抱える俺の肩を叩きながら雅紀は微笑んだ。
雅紀「まぁでもさ、兄弟なんだから…上手くいくよ。向こうは大学生だし…尖ってる時期なんじゃない?」
「うん…」
それだけじゃないんだ…なんて事は口が裂けても言えない。
いくら懐の深い雅紀でも…あの日俺が寝たのが弟なんだって知ったら…どんな顔をするか。
いっその事早くスペインに戻って欲しい…。
雅紀「今度俺遊びに行こうか?」
「え?」
雅紀「弟くんに逢ってみたいなぁ俺」
「え…」
雅紀「ちゃんと弟くんに翔ちゃんの事褒めちぎってやるからさ」
「別にそんな事しなくていいけど…まぁ、いつでも来いよ。2人だと気まずいから」
雅紀「オッケー。ふふっ、楽しみだなぁ」
コーヒーを飲み終わる頃には休憩時間が終わりに近付いていた。
雅紀と並んで店を出て会社までの道のりをゆっくりと歩いて行く。
大通りを真っ直ぐ出ると…横断歩道の先にある会社。
赤信号を待ちながら雅紀と軽い話をする。
すると突然雅紀が顔を歪ませ俺の肩を掴んだ。
雅紀「翔ちゃん前見るな」
「え?」
雅紀「いいから…」
「何だよ急に…」
笑いながら横断歩道の向こう側に目をやる。
その瞬間、雅紀の言う事を聞いていれば良かったと…俺はそう思った。
向こう側に立つお腹の大きな女性に寄り添う男性は…かつて俺の愛した人だった。