第1章 unforgiven nuit
ー翔sideー
心地いいバルセロナの風が俺を包む。
タクシーを降りた後、目の前に建つカタルーニャ美術館に圧倒される。
「すげぇな…」
芸術に疎い俺でもその存在感に圧倒される。
1歩、足を進めたけれど…美術館を見たまま俺は止まってしまった。
『バルセロナのカタルーニャ美術館…スペインに行ったら絶対行きたいんだ。だからそこも組み込んでおいてね』
この旅を計画していた時に言われた…彼の言葉。
捨てられたのに…こうやって独りで貴方を思いながら旅してる俺って…やっぱり女々しいのかな…。
………分かってた。
ノーマルの男と付き合っても結局は女のとこに戻るって。
だって…今の日本じゃ同性愛の人間達の未来は…暗い。
女なら…結婚して…子供だって…。
でも…。
それなら何で俺と付き合ったんだよ。
俺の貴重な3年を返せ。
奥から沸々と沸き上がる感情。
俺をこんなに女々しくさせるあいつに腹が立ってきた。
「ばかやろーーーーーっっ!!!」
俺は思いきりカタルーニャ美術館に向かって叫んだ。
「はぁっ…はぁ…」
行き交う人達が俺を変人でも見る様な目で見ている。
回りは外国人ばかり。
どう思われても二度と逢う事なんてないんだ。
「ぷっ…」
人の吹き出す声で振り返ると…後ろに笑いながら俺を見つめる1人の青年の姿があった。