第10章 Melhor amigo
ー翔sideー
智「じゃあ行って来る」
靴を履いた後、智くんが振り返る。
「智くん」
智「ん?」
「そろそろちゃんと奥さんと話し合って」
智「俺の気持ちは伝えた。離婚届書いて渡してるし」
「智くん…!」
智「慰謝料も養育費も払う話はしてるんだ。君には迷惑かけない。安心して」
「そういう事じゃ…」
それ以上言わせない様に智くんは俺の唇を奪って来る。
智「………愛してる」
「………」
智「いい加減に俺を信じろよ」
「………」
智「まぁ…それだけ翔くんを傷付けたんだよな俺は」
そのまま抱き寄せられる。
智「本当に…信じて欲しい」
「智くん…」
智「俺も翔くんの事信じてるから。連絡の弟くんが心配だって有給取って逢いに行こうとしてる君を信じてる。ここにまた戻って来るって」
そしてまた重なってくる唇。
「智く…会社遅刻…」
それでも何度も啄む様なキスは止めてくれなくて。
俺が強めに胸を押すと漸く離れた。
智「弟くん…何もなければいいね」
「うん…」
智「それじゃ行って来るよ」
「行ってらっしゃい」
開かれた扉が閉まるまで俺は智くんの背中を見つめていた。