第2章 夏の話
時間が止まればいいのに。
いくらそう思ったところで時は無情に流れいく。
時計の針は深夜1時を指していた。
それにしてもヴィクトルが2日続けて来るなんて珍しい。
いつもは4、5日くらい間が開くんだけど…やっぱり昼間に突っぱねたのが気に障ったのかな?それとも夕飯の時の態度?
ベッドに寝転がり考えてると、部屋の扉がノックも無しに開かれた。立っているのはもちろんヴィクトルだ。
まるでここは彼の部屋で、これが彼のベッドなのだと錯覚するほどになんの躊躇もなく乗り上げてきて、私の上に覆いかぶさった。
「お待たせ、ねぇエリ、今日はいつもと態度が違ったね。食堂で俺を起こしてくれた時、すごくよかったよ。あの場で押し倒して服を脱がせてやろうかと思ったんだけど、頑張って我慢したんだ」
慣れた手つきで私の服を脱がしてしまった男の発言に思わず小さな悲鳴が漏れた。
「でもバレエのレッスンのとき、俺を拒絶したよね。あれはすごく腹が立った。俺ああいうの好きじゃないな。だからね、今日はエリにお仕置きしようと思って、これ持ってきたんだー。食堂では可愛かったからおまけしてあげるね」
これ、と目の前に翳されたものはハンディタイプのシンプルなマッサージ器。
これで彼をマッサージしたらいいのかな?
全裸でマッサージさせるのがお仕置きって事?
いそいそとコンセントにプラグを差し込んでいる姿をぼんやり観察していると、なんだか雲行きが怪しくなってきた。
あろうことか彼はマッサージ器の丸いヘッド部分を私の胸の方へと向けてきたのだ。
「待って、それ、まさか…」
「気付いた?そうだよ、これでエリを可愛がってあげる。俺エリが潮吹いてるとこ見たいなぁー」
ああ、この顔見たことある。
私の弟を子豚ちゃんと呼んだときの顔だ。笑顔なのに目が全く笑ってない。
彼の指が見せつけるようにマッサージ器のスイッチをにかかり、ゆっくりとスライドさせると同時に耳障りなモーター音が空気を震わせた。