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私と彼との関係 R18

第2章 夏の話


ミナコ先生、絶対不審に思ったよね?

周りの人にはヴィクトルがイケメンすぎて近寄り難いし苦手なのだと言ってはいるけど、もしかしたら明日のレッスンの時に問い詰められるかもしれない。
上手い言い訳考えとかなきゃ。

帰宅すると、父さんがおかえりと声を掛けてくれたけど、余裕の無い私は挨拶もそこそこに汗を流すため、温泉の方ではなく住居の方でシャワーを浴びて家業の手伝いに移った。

大丈夫、いつも通りにすればいい。
そうだ、前向きに考えてみよう。
脅されてるとはいえ相手は歳をとった不細工なおじさんではなく、二つ上のイケメンだし、行為の最中に暴力を振るわれる事も、手酷く扱われる事もない。
大丈夫、私はまだ大丈夫。
深呼吸して気持ちを切り替える。

皮肉な事にヴィクトルが来てから家にくるお客さんも増えて、それなりに忙しい。
集中すると余計なことを考えなくて済むので今の私にはありがたい事だった。

「恵利ー、夕飯勇利とヴィクトルに持ってったげてー」

厨房の方でお皿を洗っているとお姉ちゃんに声を掛けられた。あからさまに不機嫌な顔になってるんだろう、お姉ちゃんが困った顔をしている。

「私があの人苦手なの知ってるでしょ?お姉ちゃんが、持ってってよー」

「恵利に持ってきて欲しいってヴィクトルに言われたのよ、ついでにあんたも食べてきな」

これを機に苦手意識捨ててきたら?勇利も心配してたから仲良くなって安心させてやってよ。

そう言ってお姉ちゃんは私の持っていた洗い終わったお皿を取ると、三人分の夕飯が置いてあるカウンターを指さした。
それらを持って渋々食堂の方へ足を向けると、勇利が心配そうに私を見つめていた。
まだフリーの曲が決まってなくて、自分の事でいっぱいいっぱいなはずなのに私の心配してくれてるの?
勇利は優しい子ね。
私の大切な弟。
この子が負い目を感じている姿を見るのは嫌だなぁ。

さっきまでモヤモヤしていたけど、もう大丈夫。
私、勇利の姉ちゃんだもの。
勇利に心配掛けてる場合じゃないでしょ?
私の演技力はミナコ先生お墨付き。
複雑だけど、この酔っ払って寝転んでる男にだって認められてるんだもの。

「お待たせ、今日は私も夕飯一緒していいかな?」

家族や親友に向ける笑顔を貼り付けて、私は勇利の隣…それは同時にヴィクトルの正面でもある席へと腰を下ろした。
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