第3章 夏の話2
八月の茹だるような暑さはロシア人にとって、とても厳しいものらしく、クーラーのきいてない所でのヴィクトルは、ロシアの皇帝、リビングレジェンドなんて呼ばれる男だとは思えないほど、だらしない…いや、お酒飲みすぎた時こんな感じだったかな、つまりそう、初心な乙女が見たら顔を赤くして目を塞いで悲鳴を上げてしまうんじゃないかというくらいに脱ぎ散らかしていた。
ほぼ全裸だよね、これ。
「ヴィクトル、大丈夫ー?」
私の可愛い弟がうちわでパタパタとささやかながらに風を送るが、ヴィクトルはううーと唸るだけ。
飼い主と同じくダレていたマッカチンは、ヴィっちゃんが使っていたひんやりするマットの上でお昼寝中だ。
さて、何故こんなことになっているのか説明すると、彼らの練習しているアイスキャッスルはせつは点検でリンクが使えなくて、今居るうち、ゆ〜とぴあかつきは電気工事の関連でクーラーも扇風機も使えない状態なのです。
お陰で、かけ流しの温泉以外、全く機能しない旅館は一日休館日。
両親は久しぶりに日帰りのプチ旅行、お姉ちゃんは友達と買い物に出かけて行ってしまった。
「ヴィクトル、アイス買ってきたからこれ食べて元気出して、勇利のはこっちね」
ヴィクトルには某ガリガリした棒アイス、勇利にはほんのりフルーツの甘さが美味しい氷を渡す。
「恵利姉ちゃんありがとう」
「アリガトー」
私も自分用に買った某しろいくまさんのアイスを舐めて、どういたしましての代わりに自身のコーチを労る優しい弟の頭とぐったりしているコーチの頭をぽんぽん撫でた。
「2人ともこんな暑いとこにいなくても、出かけたらよかったのに…」
ショッピングモールとか図書館とか、電車を使えば更に色んな場所に出かけられるのに…
「エリー、暑いー、早くアイス食べさせてよー、あーんってしてー」
全くこの男は…また私の発言を丸っと無視して意味不明なことを…。
「思ったより元気だね、安心したわ。勇利、こっちも食べていいよ」
ガリガリしたやつを奪い取って勇利に渡すとヴィクトルは悲愴な面持ちで、喚き出した。
「酷いっユウリーエリが俺を虐めるー、恋人を大切にしろって言ってやってよー」
「虐めてないもん、勇利はお姉ちゃんの味方だよね?人前であーんなんて出来ないお姉ちゃんの気持ち、分かってくれるよね?」