【HQ】脳内妄想‐sharing.・繋がる縁の円‐【R18】
第5章 私の彼は意地が悪い(月島蛍/sharing.)
涙で霞んでよく見えない視界に近付いてきた顔。
漏れてしまう喘ぎすら奪われるかのように、激しく唇を重ねられる。
「…りら。君は、そうやって僕だけを見てれば良いよ。」
やっと離れた唇から、荒れた呼吸と共に紡ぎだされた言葉は、彼の独占欲を物語っていた。
生憎と続けられる行為で思考は流されて、声は喘ぎに変わってしまうから、応える為に抱き締める。
それだけで、意味は伝わったようで、私の内部にある熱の動きが早まり。
身体の最深部を突き上げて止まった。
薄い膜を挟んで、自身が拍動しているのが分かる。
それは、行為の終わりを示していて、疲れたのか私にのし掛かってくる汗ばんだ身体。
「…重い。」
呼吸が整ってきてからの一言目は、ただ感じている事を吐いただけ。
「君って、ムードとか考えないワケ?」
身体を起こして、至極呆れた顔をしている月島くんがいた。
「私には無理な話。」
「だろうね。期待してないよ。」
「なら、言わないで。意味がない。」
事後の処理をしている間の会話も、なんとも可愛いげがない。
これが、先程まで身体を繋いでいた男との会話だと思うと、流石に申し訳なくなった。
「…月島くん。好き。」
少しでも甘い感じを出そうと思ったけど、気持ちを言葉にするのが精一杯。
処理が済んだのを見計らって腕に触れてみる。
私の方を見た月島くんの顔は不快感を表していた。
まるで、悪いものでも食べたか、とでも言いそうな顔だ。
「…僕の両親も、兄弟も月島なんだけど?」
でも、聞こえてきた言葉は予想と違っていた。
名前で呼んで欲しいなんて、まるで赤葦さんだ。
まぁ、これを口に出したら本格的に不機嫌になられるから止めておこう。
「…蛍。」
お望み通りに彼の名前を口に出す。
少しだけ、驚いたような顔をした蛍と目が合った。
「それで良いんだよ。」
上から目線な言葉で締め括られた夜。
私と同じく、口が若干不器用な彼はこういう言い方しか出来ないのを知っているから、腹は立たない。
明日からは宮城と東京で、離れてしまうけど。
不思議となんとかなりそうな気がして、安心して眠りに落ちた。