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フレンチの料理人のお気に入り【四宮】

第2章 編入生


その言葉を聞いた途端、の眠気は吹っ飛んだ。

いきなりしゃんと背筋を伸ばして話を聞く体制になった彼女に、周りはビクッとする。
だが、そんなことは気にしていられない。




(編入生……!)


は目をキラキラ輝かせている。



(遠月に編入できるほどの実力を誇る人が入ってくる……!)



これで切磋琢磨する仲間が増える。

彼女はそう考えたのだ。

編入生が壇上で話し出した途端に裏で驚愕している薙切えりなのことなど知る由もない。


だが、えりなが驚くのも無理ないのだ。

なぜならその生徒は、えりなの試験会場で不合格にしたはずの人物だったから。



そんなこととはつゆとも知らないは、編入生の挨拶に耳を傾けていた。
それほどの実力の持ち主ならきっと司先輩みたいに変な人なのかなぁ、などと考えながら。




そしてその考えが正しい、ということはすぐにわかった。

それは編入生が口にしたとんでもない言葉。





「入ったからにはてっぺん獲るんで」




周りが一瞬凍りつく。


そして次の瞬間、ブーイングの嵐が巻き起こった。

まあそりゃそうだろう、中等部から上がってくる生徒からしたら生意気なことこの上ない。
大口叩いてんじゃねーよ、といった気持ちもあるだろう。



だがそんな中、だけは笑っていた。




(てっぺん獲る、ね)




面白い。

受けて立とうではないか。



(てっぺんは私のものだ)




普段は穏やかな性格だが、料理のこととなると一変するのだ。

人一倍負けん気が強くやる気に満ち溢れている。



彼女が本気を出したら誰も敵わない。

そう思わせるようなオーラというものもある。




まあでも別に最初っから喧嘩腰で行くことは決してない。



(だってあの人、友達にしたら普通に面白そうだし)



はのんきにそんなことを考えながら、入学式の会場から授業のある教室まで移動する。




(まあとりあえずうまいこと接触できないものか考えてみよう)




楽しみが増えた、と言わんばかりの表情。

絶対的な実力を誇る彼女だからこそできる表情。




(ようやく高等部に上がれたわけだし、頑張ろうかな)



そう決意するのだった。
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