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フレンチの料理人のお気に入り【四宮】

第2章 編入生


遠月学園高等部入学式。


それは中等部から通ってきている者たちが、高等部に上がることを意味する。


もちろん高等部から編入する、という場合もある。

だが、これは滅多にない。


遠月は高等部からぽんと入れるほど甘くはないのだ。

現に、今年もあの薙切えりなが、編入試験を受けに来ていた者たちを全員不合格にしたらしい。
まあそれは薙切えりなが担当していた試験会場で、だけの話だが、どうせ他の試験官のところでもみんな不合格にされただろう。

だから今年も編入生は0名で、高等部に行けるのは中等部から上がる生徒だけだ。




そんなことを考えながら、新高等部1年生である九条は入学式に出席していた。
学園総帥が何か話している時も、ぼんやりと話を聞き流している。
一見したところ、普通の生徒だ。

だが、彼女は周りから崇め奉られ畏怖の念を抱かれている。


料理の腕が同学年の生徒に比べてずば抜けているのだ。

いや、同学年だけではない。
遠月学園全体の生徒の中でも、とてつもない実力を誇る料理人なのだ。
その実力は中等部の頃から噂になるほどだ。
去年、つまり中等部3年の時には、当時高等部2年で現十傑第一席の司瑛士との食戟で勝利したこともある。

薙切えりなや十傑第一席も認める数少ない料理人。
それが九条だ。



だが当の本人はまったりしているもので、総帥の言葉で士気が上がる生徒がほとんどの入学式でさえ、立ちながらうつらうつらしている。

その様子を見て、壇上の裏にいる薙切えりながため息をついて苦笑しているのにはもちろん気づいていない。





総帥からのお言葉をいただき、ようやく入学式も終わる。

……そう思われた。





だが。



「最後に本日より編入する生徒を一名紹介します」
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