第4章 十傑の席を蹴った者
〜創真side〜
九条が不思議そうに尋ねてくる。
「いやーこの焼き方はうちの親父に習ったんだよ。魚をバリッと仕上げるにはもってこいだってね。ご飯と一緒にザクザク食うのもいいし、昆布茶に浸してしんなりさせるとまた違う食感が楽しめるんだ」
俺は親父の教えをそのまま九条の質問の答えとして言う。
「君のお父さんはフランス料理の修行を?」
今度は一色先輩に質問された。
「いやーそれが俺にもよくわかんなくて。どうもいろいろな国で料理してたみたいだけど」
「……なるほど」
「まさかおにぎりの具をフレンチの技で作るなんて、さすがだね幸平くん」
九条はニコニコしながら俺のお茶漬けを食べてくれている。
「ふぅ。ごちそうさまでした」
ゆっくりと箸を置く。
「一色先輩の料理も幸平くんの料理も素晴らしかった。だから今回は引き分けってことにしとかない?」
九条の提案に一色先輩がウンウンと頷く。
「彼女の言う通りだ。この勝負、引き分けとしよう、創真くん。いい勝負をありがとう」
そう言って一色先輩が俺に手を差し出してくる。
俺もその手をぎゅっと握り返した。
パチパチパチ
「これで一件落着、だね」
九条がそう言った。
だが、俺はどうにもこれで全ての疑問が片付いたように思えなかった。
(これはもう直球で聞くしかない)
「……九条。一つ聞きたいことがあるんだけど」
「なぁに?」
「お前……何者?」