第4章 十傑の席を蹴った者
〜創真side〜
俺がそう聞くと、その場がしんと静まりかえる。
「……ものすごくド直球に聞いてきたね」
「まあな、そうでもしないと教えてくれなさそうだし」
(ずっと違和感があったんだ、こいつに)
多分この学園にいる限りいつかは分かるんだろうけど、疑問は早めに解消しておきたい。
「まあ幸平、心を落ち着けて聞きなよ?」
「そうだな」
「さすがの幸平くんも驚くと思うから」
吉野と伊武崎と吉野が口を揃えてそう言う。
「そうだね。きっと僕が十傑第七席ってことよりも驚くと思うよ」
(十傑の話より驚くこと……?)
「なんか私から言うのもなんだし、悠姫説明してよ」
「えーいいの?こんな大役さずかっちゃって」
「いいのいいの」
「わかった。じゃあ」
ごほん、と吉野が咳払いする。
「えっとですね、さっき十傑の説明の時に、十傑の席を蹴った人がいるって言ったでしょ?」
「おう」
「それ、のことだよ」
「え」
「だから、が十傑の席を蹴った張本人」
(・・・。)
「って、はぁぁぁああああ!?」
俺は思いっきり叫んだ。
「あはは、驚かせちゃったかな」
九条はコロコロと笑う。
「いや、驚くってレベルじゃねーよ!つーことはあれか、お前十傑並みってことか!一色先輩クオリティか!」
「……うん、一色先輩クオリティっていうと、なんか私まで裸エプロンする人みたいだね」
九条が苦笑いする。
「まあでもそんな大したことないよ」
(いやいやいや、そこ謙遜されても!)
これでようやくわかった。
なぜ授業の後に話しかけられたとき、田所が九条のことをすごいと言ったのか。
なぜさっき伊武崎が『あの九条』と言ったのか。
なぜ俺のお茶漬けを見ただけであそこまでの推測ができたのか。
(やっぱりこいつ、とんでもねえ奴だった……!)
「じゃあ改めまして。私の名前は九条。十傑の席を蹴った者です。よろしくね、幸平くん」
「おう、こちらこそ」
俺たちは笑顔で握手を交わした。