第4章 十傑の席を蹴った者
〜創真side〜
「ゆきひら裏メニューその20改!サワラおにぎり茶漬けだ!本当は鮭で作る品なんだけど、本日はサワラバージョンにアレンジしてみたんだ。みんなのぶんも作ったから、一緒におあがりよ!」
俺は五人ぶんのお茶漬けを差し出す。
「わあ、ありがとう!注いであるのはなぁに?」
榊の質問に俺が答えようとすると。
「……塩昆布茶」
「え……?」
「これ、塩昆布茶、だよね?」
九条がニッコリと笑いながら言った。
「あ、ああ」
(まだ食べてもいないのに、見た目と香りだけで当てたのか……!?)
俺は驚きを隠せなかった。
「……九条を侮らないことだな」
ボソッと伊武崎が言う。
「そう言う伊武崎くんだって最初は私に料理勝負ふっかけてきたよね?」
「……昔の話だ」
「ふふふ」
九条が口に手を当てて上品に笑う。
「まあともかく、このお茶漬けをいただくとしますか」
そう言って九条はサワラを口にする。
他の四人もそれにならう。
「……!うまい!」
一色先輩が笑顔でそういってくれる。
(ほとんど喧嘩買ったようなもんだったから、いちゃもんつけられるかと思ったぜ、ははは……)
「サワラの身がすごくジューシー!何よりこの皮のザクザク感!噛むたびに旨味が湧き出てくる……!」
「ただ炙っただけじゃこの歯ごたえは出ないわ、一体どうやって……」
「ポワレだ」
一色先輩が聞きなれない単語を口にする。
「このサワラ、ポワレで焼き上げられている」
「……っ!」
「……!」
「……!?」
「ってなんであんたが驚いてんのよ!」
吉野がツッコミを入れる。
「いや、ポワレってなんだろうって思って……」
「は!?」
どうやら俺のやり方はポワレと言うらしいが、初耳だ。
「ポワレっていうのは、フランス料理における素材の焼き方『ソテー』の一種だよ。素材の上からオリーブオイルなどをかけて均一に焼き色をつける技法だね」
一色先輩が説明してくれる。
「ねえねえ幸平くん。一つ教えてもらえないかな?」
「お、おう」
「なぜ君がフランス料理の技法を知っているの?」