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フレンチの料理人のお気に入り【四宮】

第3章 極星寮


〜創真side〜



「まあ、その話はとりあえず置いといて」


エプロン姿の人が騒がしくなったその場をいったん落ち着かせる。




「九条君が君とすでに知り合っていた、というのは驚きだったけど、それはともかくとして、一回仕切り直そう」


そう言ってその人は俺に手を差し出す。



「ようこそ極星寮へ、歓迎するよ。僕は2年の一色だ。一色先輩とそう呼んでくれ」


一色慧。
俺たちより一つ年上の先輩で、さっき天井からいきなり現れた人。
206号室。




「……うっす」


俺は一色先輩と握手する。




「いやあ、僕は嬉しいよ。青春のひと時を分かち合える仲間がまた一人増えたんだからね。こんなに嬉しいことはない!いいかみんな、一つ屋根の下で暮らす若者たちが同じ釜の飯を食う!これぞ青春!これぞ学生!僕はそれに憧れて寮に入ったんだ。ああ、これからも輝ける寮生活を一緒に謳歌しよう!」



「それはいいっすけど、屋根裏つたって呼びに来るのだけはやめてくれませんか?」



(……もっともな言い分だ。何しろ俺もいきなり天井から来た時は死ぬほどびびったしな)


「え、ダメかい?じゃあ男子にもこれを使おうか」


一色先輩は部屋に張り巡らせてあるパイプのようなものに視線を移す。


「これで誘うと田所ちゃんとか毎回来てくれるしね」

「だ、だって……行くって言わないと数分おきに話しかけて来るんだもん……」



(どうやら相当ホラーだな)




「無視していればそのうち諦めるのに」

「律儀だよねー」



……他の女子二人はタフなんだろうな、田所よりも。




「ずっと話しかけられるのはうぜぇな……」

「屋根裏の方がマシか」


男子勢も青ざめている。




「なんつーか……変人ばっかりか?この寮」

「すぐ馴染めるよ、創真くんなら」


……田所にフォローのようでフォローでないことを言われたが、気にしない。





「みんな飲み物は持ったね?」


一色先輩がコップを掲げる。



「幸平創真くんの前途に、そして極星寮の栄光に、乾杯!」


「「「「かんぱーい!!」」」」



さあ、宴会の始まりだ。
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