第3章 極星寮
〜創真side〜
十傑。
その言葉、過去に一回だけ聞いたことがある。
それは編入試験のときだ。
《離れろ!この方をどなたと心得る!》
《……誰なの?》
《中等部主席生徒にして学園の最高意思決定機関、遠月十傑評議会の史上最年少メンバー、薙切えりな様だ!!》
薙切のお付きの生徒に言われた言葉。
疑問をそのままにしておくのは嫌なので、俺は寮のみんなに聞いてみることにした。
「なあ、十傑って何なんだ?」
俺がそう言うと、みんながびっくりしたような顔になる。
「え、本気で聞いてる?」
「君、本当に何も知らずに遠月に入ったんだね。丸井、説明してあげて」
「何で僕なんだよ……」
「文句言わないで、新入りくんのためよ」
丸井は渋々ながらも、俺に説明してくれる。
「遠月十傑評議会。学内評価上位10名の生徒たちによって構成される委員会だ。遠月では多くの事柄が生徒の自治に委ねられており、あらゆる議題が十傑メンバーの合議によって決定される。まさに学園の最高意思決定機関。学園の組織図的には総帥の直下にあり、講師陣ですら十傑の決定には従わなければならない」
「何十年も昔、寮の部屋が常に満室だった頃、極星から十傑が出まくってたんだってさ」
「十傑の席全部、極星勢が占めた年もあったようね。ふみ緒さんがその話を始めると、長いのよね」
「へぇ」
丸井と吉野と榊の説明で、とりあえず十傑がなんたるかはわかった。
(薙切えりなはその十傑のうちの一人ってわけか……)
「あ、あとね」
吉野が思い出したように話し出す。
「さっき丸井が学内評価上位10名が十傑のメンバーって言ってたでしょ?普通はそうなんだけど、実は今は違うんだよね」
「え、そなの?」
そいつは驚きだ。
「ええ、一人だけ十傑の席を蹴った人がいるの」
(十傑の席を蹴ったってことは、今の十傑には学内評価10位以内のやつのうちの一人がいない、ってわけか……)
「なあ、そいつ、誰なんだ?十傑の席を蹴ったってやつ」
俺がそう言うと、みんながまた顔を見合わせる。
「まあ十傑について知らなかったんだから、知らなくても無理ないか」
「後でわかるよ。その人、極星寮の人だから」