第3章 極星寮
「アタシがここの寮母、大御堂ふみ緒だ。『極星のマリア、ふみ緒さん』とそう呼びな」
……いかにも怖そうな寮母に一番に似合わない呼び名だ。
(またおかしなところに来ちまった……!)
「それであんた、食材は何を用意したんだい?」
「は?食材って何の?」
今から寮に入るのに何で食材……?
「決まってるだろ!極星名物、入寮腕試しだよ!一つ、入寮希望者は一食分の料理をつくり、その味を認められた者にのみ入寮が許される。一つ、審査は寮長による。一つ、食材の持ち込みは自由とする」
そ、そんな話……
「聞いてねえよ!食材なんて用意してねぇし!」
「じゃあ不戦敗だね。腕を見ずには、極星の敷居はまたがせない」
「えっ、てことは今夜俺は……」
「そりゃ野宿だろ」
(あっさりと言いやがったな!!)
「ふざけんな!四月の夜の冷え込み、ナメんなよ!そうでなくとも、疲労と空腹でくたばりそうなんだぞ!?」
「はっ、腕試しは絶対だ。諦めな。厨房には余り物の半端な食材しか残ってないしね」
(余り物……?)
「今日は日が悪かった……」
「その余り物の食材は使っていいってこと?」
「何だい?」
(これなら何とかなるかもしれない)
「やるよ、入寮腕試し。厨房はどこだ?」
(絶対に野宿だけは嫌だしな……!)