第11章 〜11〜
「その時、私を織田家の女中にならないかと声をかけてくれたのは秀吉様なんです。」
「え、そうなの?」
「ええ。会合で1度だけお会いしたことがあって。壊されていく城を呆然と立ち尽くしながら見ていた私を姫だと思い、心配して声をかけてくださったんです。」
「そうなんだ……」
「私は本当は姫ではなくただの女中だと話せば、殺される可能性あるだってありました。でも、あの人はそうしなかった。それだけじゃなく、私の生い立ちまでちゃんと聞いてくれた。」
「……優しいね、秀吉さんは」
「ええ、すごく」
そう言った優鞠の顔はとても綺麗に微笑んでいて、彼女が秀吉さんのことが好きなのは手に取るように伝わった。
「私が元は織田家の傘下の武士の娘だと知ると、秀吉様は謝罪までしてくれたのですよ。」
「謝罪?」
「ええ。織田家の傘下の家臣が、織田家に関係する戦で家族をなくしたのに、なんの対処も出来なくて申し訳ないと。私はその時、家族を無くしてから初めて涙が出ました。」
「……優しすぎる……(そりゃ惚れるわ……)」
「ええ、私もそう思います」
優鞠は困ったように笑った。
(ほんと、あの人は優しすぎて私を困らせるのが上手い……)