第11章 〜11〜
「そして、秀吉様は私が織田家の女中となれるよう手配してくださったのです。秀吉様には感謝してもしきれないのです。何度もお礼を言いましたが、笑って気にするなと仰るばかりで……」
「……言いそう」
「それから、私は織田家の女中として生きてきました。ここの女中の皆さんは、私が武士の娘だとか、前はどこで働いていたとか、そんな事を一切気にせず私に接してくれるのです。」
「それは、信長様が身分の差別を嫌ってるから?」
「恐らくそうでしょう。ここの皆さんは、私を私として見てくれる。仕事が上手く行けば褒めてくれるし、失敗したすれば姉のようにちゃんと叱って、励ましてくれる。ここの皆様はどの方もお優しいです」
「……そうだね」
「確かに辛いことも多かったけど、ここで働けるようになって私は幸せなんです。」
「うん。良かった。優鞠が笑えてて」
「……ですが、正直に言うと、怖いのです。」
「……え?何が?」
「友達を作ることが……です」
「……私も同じこと思ってるよ」
「……?」
「優鞠は、私と友達になって私が居なくなることが怖いの?」
「……それもあります。」
「他は?」
「同年代の女性と、普通に話をするのが怖いのです……」
「え……?」
「また自分の意志とは関係なく、陰口を言われたり、虐げられる事が怖いのだと思います。仕事だと思えば平気なんですが……」
そう言うと優鞠は申し訳なさそうに私に謝った。
「勿論、様がそのような卑劣な事をする方だと思っているわけではありません。ですが、思いとは裏腹に身体が拒否しようとするのです。」
「……わかるよ。私も前にいた時代では友達なんて数人しか居なかったし、人と関わることがあんまり好きじゃなくてね。」
「……」
「優鞠、次は私の話を聞いてくれる?」
「……えぇ、もちろんです」
そう言うと優鞠は、真っ直ぐ私を見つめた。
それを見て、私はゆっくりと話し始めた。