第11章 〜11〜
「その大名は、私の父が織田家の傘下だったことを知り、私を女中に迎え入れたのです。」
「それって……」
「私の父の変わりに、自分が織田家に取り入りたい。そう考えていたようです。私は表向き女中という事になっていましたが、女中としての仕事の他に、まるで養子に入ったかのように扱われ、他の武将との会合などに顔を出させられる事もしばしばありました。」
「良いように使われてたってこと?」
「ふ、そうですね。でも私は何でもよかったんです。生きるためなら。」
「……ちょっとわかるよ。その気持ち……」
「……でも、周りはそうもいかなかった。」
「え?」
「その家に私より前から務めていた女中達です。」
「あぁ……」
「本当に養子としてなら、きっと皆それ相応に扱ってくれたと思うんです。でも、自分と同じ女中なのに、私が大名にちやほやとされているのが許せなかったんでしょう。それに私が武士の家の出だと知ると、女中という仕事を馬鹿にしてるのかと言われたこともありました。武士の娘は普通、女中にはなりませんからね」
「そっか……」
「日々、大名に良いように使われ、女中達に陰口を言われても、私は特に気にしてなかったんです。最初は。」
「……そうなの?」
「私も、生きるために必死だったんです。確かに窮屈な生活だったけど、我武者羅に毎日与えられた仕事を頑張って、ただ意味も無く生きていかなければと思ってました。」
「……」
「元は武士の娘だから会合等に呼ばれても対処出来たし、いくら武士の娘だからと言っても小さい家なので、掃除や洗濯、料理などもひと通り教えられていたので困ることは無かったので、仕事に不満はなかったんです。」