第11章 〜11〜
「優鞠の事か?」
「はい……。あの女中、出は武士の家ですよね?何故女中に?」
「ああ、その話か。」
秀吉は信長が優鞠にの見張りを頼んだ事がもう知れ渡ってるのかと少し焦ったが、そうではないらしいと内心ほっとした。
「優鞠は元は織田家の傘下の武士の家の娘だ。」
「……やっぱり……」
「ん?」
「いや、それで?」
「戦で父親が戦死してな、それを苦に母親も心を病んで亡くしたらしい。身内を亡くして、食うに困って女中を始めたと聞いたが」
「へぇ……でも織田家に仕えて3年目って聞きましたけど」
「ああ。織田家に仕える前は地方の大名の家に居たんだが……」
「……なんですか?」
「聞いた話によると、先輩女中に酷く苛められて、使えていた大名も戦で倒れてな。それで織田家に仕えるようになったんだ」
「なんで……苛められたんですか」
「そりゃあまあ、武士の出なのに女中になったからじゃないか?そこは詳しくは知らないが……」
「……そうですか……」
家康はそう言うと、秀吉に礼を言い、部屋に戻ると言って広間を出ていった。
秀吉は家康を見送りながら一人考えた。
(家康……優鞠と知り合いなのか?まあ歳も同じ頃だし、優鞠は今は女中でも元は武将の娘だ。それに織田家の傘下の家。幼少の頃、顔見知りでも不思議ではないか……)
そう考えながら秀吉は盃を傾けた。