第48章 〜
戦が始まって数時間後、陣営で待機していると前軍が敵軍を押し切り、後退し城へ戻るという報せが舞い込んで俺は立ち上がった。
負けたも同然なのにまだ押してくる敵を抑え倒しながら後方に戻る信長様の率いる隊を守り無事に城へ帰す事が俺の仕事だ。
そして陣営を出て残る敵を倒していると、信長様が無事に城へ戻ったという報せが入った。
今回は敵に信長様自らが圧力をかけるため全軍となり、敵が弱ったところで引き、相手側の戦力と闘士を削るのが目的だった。
今後も長く続く戦のために自分が率いる隊が負けては城に侵入され織田軍の兵力が削られてしまう。
それもあってかいつになく気が焦っていた。
「秀吉様。そろそろ我々も引き返さねばなりません」
「まだ駄目だ。俺達にかかってくる奴が居なくなるまで引かない」
「そうだよ。まだ向こうに戦力が残ってるのに私達が引いたら意味がなくなる」
「数は減ってきたがお前達気を抜くなよ」
俺がそう言うと、織田軍の兵は弱りながらも負けまいと闘士を燃やして来る敵を斬り捨てる。
「...まだまだだ」
俺がそう小さく呟くと、近くにいた優良が笑いながら俺を見た。
「...ふふ」
「...お前。戦場で笑ってんじゃねぇ」
「いいじゃない。仕事はしてるわよ?」
そう言いながら自分に斬りかかってきた敵兵をいとも簡単に斬り捨てた。
「お前は...いつも余裕綽々だな」
俺は自分の周りにいた敵を薙ぎ倒すと優良と馬を並べた。
「なんでも余裕そうにしてた方がかっこいいでしょ?」
「全くお前は...」
「ほら。そろそろ終わりじゃない?」
辺りを見渡すと立ち上がっているのは味方の兵士だけになっていた。
殿の仕事は無事に終わったと俺は安堵した。
「なぁ優良」
「ん?」
「...城に帰ったら、お前に話があるんだ」
「なに?今じゃ駄目なの?」
「駄目だ。帰ったら話す。」
「気になるじゃん.......危ないっ!」
「...えっ...」
優良の声に前を向くと、倒れていたはずの敵の兵士が命かながらに弓を引いているのが見えた。
咄嗟に避けようとしたが、どうにも間に合わない。
最後の最後に気を緩ませた自分を恨んだ。