第46章 ~46~
「もう、朝のうちにちゃんと在庫確認してっていつも言ってるのに……」
今日も朝から市は賑わっていた。
私が目指すのは砂糖菓子屋さんで、うちの店と同じくらい老舗で昔からお世話になっている。
お客様が来る前にと、少し急ぎ足で店に行った。
「親父さーん。」
「おう、お清ちゃん。朝からどうしたんだい?」
「またお父ちゃんが砂糖忘れたから仕入れに来たの」
「またかい。全くあいつは抜けてるなぁ」
「でしょ?本当迷惑……」
「お清ちゃんがいてよかったなぁ。嫁いだら店が潰れちまうんじゃないか?」
「嫁ぐ予定なんてないもん」
「いや、こんな可愛い子がまだ嫁ぎ先の宛もないとはなぁ……」
「もう、その話はいいから。砂糖お願い」
「あいよ、いつものでいいな?」
「うん。」
親父さんは奥へと砂糖を取りに行くのを見送って、店先に並べられた綺麗なお菓子を眺めていると、ふと後ろが騒がしく思えて振り向いた。
「……ん?」
振り向くと、道の真ん中で女の子たちがきゃあきゃあと科をつくって騒いでいる。
(……なにあれ……邪魔だし)
私が怪訝そうにその集まりを見ていると、戻ってきた親父さんが声をかけた。
「どうかしたかい?」
「ん、いや、あれ……」
私が目線で促すと、親父さんは苦笑いしながら教えてくれた。
「あぁ、あれはしょうがねぇよ」
「なんで?」
「秀吉様が久々に城下に顔を見せたんだと。そしたら瞬く間にあれだ。全くすごいお人だよ」
「秀吉様……ねぇ……」
「なんだ、お清ちゃんは興味ないのか?」
「無い。むしろああいう軟派な人は嫌いだもん」
「ははは、お清ちゃんらしいな」
親父さんは豪快に笑い飛ばした。
「そもそも、あんな所で……通行人の邪魔じゃない」
「まあまあ、許してやんな。ほら」
「ありがとう」
私は砂糖を受け取ると、懐から風呂敷を出して大事に包んだ。