第46章 ~46~
「それと、ほら」
「んー?」
顔を上げると、小さな瓶に詰められた金平糖だった。
「わぁ、綺麗。」
「やるよ、いつも頑張ってるお清ちゃんに御褒美だ」
「ほんと?ありがとう」
「それ食べて今日も頑張んな」
「うん!じゃあ、また!」
「おう」
私は金平糖を袖裏に大事にしまって店を後にした。
店に戻るにはさっきの集団の横を通らなければならない。
絶対に関わらないよう、道の端に避けて通ったつもりだったが、中心にいる人が動いたのか外側にいる女の子とぶつかってしまった。
「わっ……」
私は地面に倒れ込んでしまった。
「やだ、もう痛い」
「えー、ぶつかったの?大丈夫?」
見上げると、女の子たちが私を見下ろしていた。
その顔が凄く嫌な感じがした。
(ぶつかってきたのはそっちの癖に、謝るつもりないわけ?)
私が苛立ちながらも立ち上がろうとすると、スッと目の前に手が差し伸べられた。
「……?」
ちらっと目線だけで見上げると、差し伸べた人物は、どうやらこの邪魔な輪を作り出した張本人の様だった。
「悪いな、怪我はないか?」
優しそうな声をかけられたが、私とぶつかった女の子は謝る様子も無く、事の成り行きを見つめている。
それにますます私は腹が立った。
「大丈夫です。ご心配なく。」
私が差し出された手を掴まずに立ち上がると、彼と目が合った。
すると、彼は驚いたような顔で私を見つめていた。
「…………」
(……?)
私は不思議に思いながらも、早くこの場を立ち去りたかった。
「それじゃ、失礼致します」
「あ、おい!……ん?」
私を引き止めるような声が聞こえた気がしたが、すぐに女の子の声でかき消されて、聞こえなかった振りをして早歩きでその場を立ち去った。