第44章 〜44〜番外編③
「……私を見て……」
「……あの……私は……」
東雲さんの足が私の足に絡みついて、本当に身の危険を感じた。
腕を拘束され、身動きが取れないので仕方なく大声で助けを呼ぼうと決めて大きく息を吸った瞬間、襖がガラリと音を立てて開かれた。
(……え、助かった……?誰……)
顔を向けると、不機嫌を通り越して完璧に怒っている光秀さんが立っていた。
「東雲、そこまでだ」
光秀さんは冷たく言い放つと、すたすたと歩いて来て東雲さんの肩をグイッと押して、私を助けてくれた。
「……光秀さん……どうして……」
「……東雲がお前と最後に接触するなら、今日の朝だと思って来てみれば……」
光秀さんは冷たい目で私を見た。
「……は、はい。(……怖い……)」
「お前、俺の忠告は聞いていたな」
「……はい……」
「何故ここへ来た」
「……あの……お別れを言いに……」
「それだけの理由でか?」
「えっと……あと、昨日反物を東雲さんに頂いたので……そのお礼を……」
「だとしても、何故1人で来た。気を付けて行動すると言う意味がお前には分からないのか」
「……ごめんなさい……」
「まったく……」
光秀さんは私に溜息をつくと、今度は東雲さんに冷たい目線を移した。
「東雲」
「はいはい」
東雲さんも光秀さんに怒ったような視線をぶつける。
「お前にも言ったはずだな、こいつは冗談が通じないと」
「……冗談じゃないもの。私は本気よ」
「尚更タチが悪い」
「貴方に私の気持ちなんて分からないわ。邪魔しないで頂戴」
「お前の気持ちなど知りたくもない。こいつは信長様の所有物だ。お前がどう足掻いても手に出来る者ではない」
「伊達は良くて私は駄目なの?そんなの差別だわ」
「そういう話ではない。諦めろ」
「第一、伊達が来るならまだしも、何故貴方なの」
「俺だって好き好んで来た訳では無い。信長様の命で無ければ、こんな小娘1人のために動く訳なかろう。それに……お前の本性を知るのは信長様と俺だけだからな」
「やぁね、本性だなんて言い方。失礼よ」
「生憎、そういう配慮は持ち合わせて無くてな」
光秀さんはニヤリと笑いながら立ち上がると、私に手を差し出した。