第44章 〜44〜番外編③
「……貴方にしか出来ないの……」
「え……」
「……私と一緒に来てくれない……?」
「えっと……どこに……」
妖艶な視線の中に、茶屋で見た寂しさが混ざっているような気がして、何故だか目が離せなかった。
「……京へ」
「京?」
「そう……」
(京って……え?どういう事……)
私が困惑した顔になると、東雲さんは私の腕を引いて抱き締めた。
「……伊達なんて辞めて、私にしない……?」
「……え……伊達って……(政宗のこと?)」
「そうよ……昨日馬に乗って2人で城を出るのを見たわ……」
「……そう……ですか……(私にしない?って……もしかして東雲さんは……)」
私の頭にひとつの答えが浮かんだ時、身体が離れたと思った瞬間頬に柔らかい感触がした。
離れていく顔を見て、口付けられたのだと気がついた。
「!!!」
「ふふ、そんな驚かないで」
口付けられた頬に触れられ、唇に指が這わされて、ビクっと身体が震えた。
「……怖いことなんて何も無いわ……」
「いや、あの……」
「……貴方が好きなの……」
「…………(やっぱりそうだ……)」
「好きよ…………」
「ちょ、ちょっと待ってください!東雲さんは……女性……ですよね?」
「ええ、そうよ?女が女に惚れちゃいけない?」
「そうは思いませんけど……なんで私なんですか?」
「……可愛いからよ」
「可愛くなんて……」
「あと……」
「……なんですか……?」
「……貴方が私の悲しみに触れてくれたから……そんな人……初めてだったの……」
「悲しみ……」
そう言った東雲さんが悲しく微笑んで私も悲しくなってしまった。
(でも……一緒に行くのは……無理だよ……)
「東雲さん……」
「……なぁに?」
「あの……」
私が続けようとした言葉が分かったのか、肩を押されて押し倒された。
「ちょ……東雲さん……!」
「大きな声を出さないで……」
東雲さんは、しっとりとした声とは真逆に強い力で私の手首を掴む。
(……ほんとにやばい……)