第44章 〜44〜番外編③
「あー、楽しかった……。さて、問題は明日だなぁ……」
懐に閉まっておいた手拭いを取り出して眺める。
(……結構綺麗に出来た……刺繍もちょっと優鞠に教わっただけだったけど……可愛くできたし。喜んでくれるかな……)
手拭いを綺麗に畳んで、明日の朝の事を考えながら、寝る支度をして布団へと潜り込んだ。
(大丈夫、うまく行く……お別れくらいちゃんと言いたいし……朝、光秀さんにだけには会わないようにしなきゃ……)
明日の朝のシュミレーションをしていると、いつの間にか眠ってしまっていた。
翌朝、早い時間に目が覚めた。
寝過ごすのが怖いので、静かに布団を片付けて身支度を整えた。
(……朝って何時なのかな……まだ寝てたら申し訳ないけど……この位の時間の方が誰にも会わないよね……)
私はそう思い立って、手拭いを手に部屋を出て東雲さんが泊まっている客間へと向かった。
客間が並ぶ廊下へと誰にも会わずに辿り着いた。
(……どの部屋かな……わかんないよ……)
来てみたはいいものの、東雲さんの泊まっている部屋が分からず立ち往生してしまった。
(声掛けて違う人の部屋だったら困るしな……どうしよう……)
廊下で困っていると、奥の1番広い部屋でカタンと、物音が聞こえた。
(……あの部屋……かな。物音したってことは起きてるよね……)
部屋の前まで歩いて、襖の前で悩む。
(もし、違う人の部屋だったら……東雲さんの部屋を聞けばいいよね……よし。)
一呼吸ついて、声を掛けようとした瞬間、襖が開かれて吃驚して声を上げそうになった。
「!!!」
「……来てくれたのね……」
「東雲さん……」
驚いた私の手を素早く引いて、東雲さんは部屋へと入れてくれた。