第36章 〜36〜
部屋の襖を開いて中を見る。
「優鞠は……居ないか。」
家康は優鞠と無事に話せたのだろうか。
この時間に部屋にいないということは、恐らく優鞠に会えるのは明日だろう。
布団の支度をして、寝転ぶ。
(……ああ、そういえば。佐助くん次はいつ来るかな……暫く安土に居るって言ってたけど……歴史の事聞きたいし……)
ちらりと先程鞄を押し込めた襖を見る。
(佐助くんは現代の荷物とかどうしたんだろ……ああ、最初にあった時のお金も返さなきゃ……聞きたいこと沢山あるんだけど……狼煙なんてやり方わからないし……)
天井を見つめてふと考える。
(……実はもう上に居たりして……)
ちょっとした好奇心が湧いて、試しに呼びかけてみた。
「……おーい、佐助くーん」
(いやいや、そんな都合よくいる訳ないよね……寝る支度しよう)
そう思い、寝間着に着替えようと、立ち上がろうとした。
すると、目の前に今名前を呼んだ人が現れて、つい叫びそうになるのを必死に堪えた。
「…………びっ……くりした…………」
「やぁ、さん」
「こんばんは……」
未だに驚いている私を見て、佐助くんは面白そうに呟いた。
「驚きすぎだ。まあ、俺も名前を呼ばれて結構驚いたけどね」
「だって、まさか本当に上にいるとは……」
「明日から少し安土を離れることになってね。それを伝えに来たんだけど、夜も遅いしどうしようかと思ったら、君が呼ぶから降りてみた。」
「……名前呼んで良かった……佐助くんに聞きたいことがいくつかあってね……」
「なにか困った事でも?」
「うん……あ、とりあえずお茶入れるね。座って?」
「ありがとう」
佐助くんが腰掛けるのを横目に見ながら胸を落ち着かせ、お茶の支度をする。