第35章 〜35〜
秀吉さんに言われた近くの部屋に行き、押し入れから布団を取り出して敷く。
(まさか政宗がお酒飲めないとは……)
驚きながらも、そんなところも少し可愛いなと思い、
布団を敷き終わると同時に2人が政宗を抱えてやってきて、布団に寝かせてくれた。
「ありがとう……ごめんね、面倒かけて」
「気にすんな。ま、こいつには酒を飲ませないよう気をつけろ」
「うん。そうする。」
風邪をひかないように、肩まで布団を掛けてあげる。
顔は赤いが、呼吸は辛そうではないので安心した。
「さて、そろそろ解散するか」
「そうですね、もう夜も更けてまいりましたし……」
「片付け手伝うよ」
「ああ、頼む。あ、お前はちゃんと、自分の部屋で寝ろよ?」
「え?」
「朝まで起きないとは思うけど……」
「いや、この部屋では寝ないよ……(何言ってるの……)」
「そうか?ならいいが……」
「……秀吉様は様のことになると、まるで母親の様ですね」
「ふふ、確かに……お母さん」
「誰が母親だ。せめて兄貴にしてくれ」
「分かってるよ、お兄ちゃん」
「おう。」
2人とともに部屋を出る。
先に広間へと戻る2人を確認して、部屋をもう一度覗き込んで、おやすみと小声で言って襖を閉めた。
(明日起きたら戸惑うだろうから……ちょっと早起きして来てあげよう。悪いのは……私?泣いた私が悪いのかな……)
もはや何がなんだがわからなくなってしまった。
光秀さんに私が恋愛の話を振ってしまったことが最大の原因かと思うとそれが政宗に知られることが少しだけ怖くなった。
(でも……誰にも言うなって言われたし……やっぱりあの話は本当なんだろうな。すごい優しい顔してたし……)
意地悪をされても光秀さんのことを憎めなくて困る。
でも、悪い人ではないが、良い人とも言い難い。
なのに時たま見せる優しさに戸惑ってしまう。
(私には……妹にちょっかいかけて遊ぶお兄ちゃんって感じかなぁ……。ひたすら優しい秀吉さんとは違うタイプ。あの感じで戦をするなら……敵は恐ろしいだろうな……。)
そんなことを思いながら、宴の片付けの為に広間へと戻った。